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水戸地方裁判所 昭和42年(む)1号 決定 1967年9月24日

主文

茨城県警察本部捜査第二課長が、昭和四二年九月二三日、申立人に対してなした、つぎの処分を取り消す。

申立人のその余の申立を棄却する。

(一)  申立人のなした同人と被疑者大森順との接見の申出に対する拒否処分

(二)  みぎ両名の接見時刻を昭和四二年九月二四日午前一一時と指定した処分

理由

本件申立の理由は別紙記載のとおりである。

よって審案すると、当裁判所書記官作成の電話聞取書によれば、被疑者大森順は昭和四二年九月二二日午后九時五〇分頃収賄の嫌疑のもとに茨城県警察本部捜査第二課員により逮捕されたものであるところ、弁護士の申立人が同月二三日午前一〇時過頃捜査第二課長に対し、みぎ被疑者の弁護人となる意思のもとに即時被疑者との接見を求めたところ、同課長は捜査の必要を理由にこの申出を拒否した上、接見の時期を同月二四日午前一一時と指定したことが認められる。おもうに捜査第二課長が申立人の即時接見の申出を拒否し接見時期を制限したのは、事案の性質上、真相の究明のために必要と考えてとった措置であることは首肯できる。しかしながら他方かような接見の時期的制限については被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するものであってはならないこと当然である。ところでこの防禦権は被疑者が弁護人に依頼する権利を含むものであることは明らかであり憲法は逮捕された被疑者に対し、直ちに弁護人に依頼する権利を保障しているのであるから被疑者が弁護人に依頼する目的のもとに弁護人と接見することを拒否乃至制限することは違法の処分といわなければならない。ところで準抗告申立書冒頭所掲の申立の趣旨第一項において接見拒否処分の取消を求めているが同書面を通観すれば申立人は右拒否処分のほかに接見時期の指定処分をも含めてその取消を求めている趣旨と解するのが相当である。

つぎに申立人は前記書面冒頭申立の趣旨第二項において捜査第二課長に対し即時接見を許可すべきことを命ずる決定を求めているが、このように裁判所が捜査官に対し新たに行政上の措置を命ずることは司法行政分立の趣旨にてらし否定せらるべきであると考える。しかも本件においては捜査第二課長に対しあらたな措置を命ずる必要も特に認められないのである。

よって刑事訴訟法第四三二条第四二六条に則り主文のとおり決定する。

(裁判官 石崎政男)

<以下省略>

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